金融庁の金融審査会市場ワーキング・グループ報告書で「老後資金として夫婦2人の場合、2,000万円が必要」と発表した際、資産運用として「つみたてNISA」や「iDeCo」の名前を挙げました。
それを聞いてつみたてNISAを始めてみようかと気になっている人はいませんか?
名前は聞いたことがあるけれど、「投資」や「運用」という単語が出てくると難しいのではないかと躊躇してしまうこともあります。
金融庁が老後資金の2,000万円を撤回しても、やはり老後資産は心配です。
そこで資産運用の1つとして、つみたてNISAを始めるために知っておきたいこと、始める前にやらなくてはいけないこと、メリット・デメリットなどについて紹介していきます。
つみたてNISAとはどういうものか知ろう
つみたてNISA(つみたてニーサ)というのを耳にすることはあっても、どういったものか分からない人も居るのではないでしょうか?
つみたてNISAはどういうものなのかをここでは紹介していきます。
つみたてNISAの概要
つみたてNISAとは、2018年1月からスタートした、少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度のことを言います。
つみたてNISAの対象となっている商品の基準は次のようなものです。
- 手数料が低水準
- 頻繁に分配金が支払われない
長期・積立・分散投資に適したものに限定されています。
取り扱っているものは、次のようなものです。
- 公募株式投資信託
- 上場株式投資信託(ETF)
そのため、幅広い年代や投資をしたことがないという人でも利用しやすくなっています。
表にまとめると次のようになります。
利用できる人 | 日本にお住まいの20歳以上の方(口座を開設する年の1月1日現在) ただし、つみたてNISAと一般NISAはどちらか一方を選択して利用可能 |
---|---|
非課税対象 | 一定の投資信託への投資から得られる分配金や譲渡益 |
口座開設可能数 | 1人1口座 |
非課税投資枠 | 新規投資額で毎年40万円が上限 (非課税投資枠は20年間で最大800万円) |
非課税期間 | 最長20年間 |
投資可能期間 | 2018年~2037年 |
(出典:金融庁「つみたてNISAとは」)
投資対象商品は長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託になります。
その中でも公募株式投資信託の場合、以下の要件をすべて満たしていなくてはいけません。
- 信託報酬は一定水準以下(例:国内株のインデックス投信の場合0.5%以下)に限定
- 販売手数料はゼロ(ノーロード)
- 顧客一人ひとりに対して、その顧客が過去1年間に負担した信託報酬の概算金額を通知すること
- 信託契約期間が無期限または20年以上であること
- 分配頻度が毎月でないこと
- ヘッジ目的の場合等を除き、デリバティブ取引による運用を行っていないこと
まずは、つみたてNISAの概要を知ることから始めましょう。
つみたてNISAの非課税制度を理解しよう
非課税ということは節税にも繋がるため、始めようという人もいるのではないでしょうか。
つみたてNISAは少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度のことを言いますが、その制度を理解することが大事です。
つみたてNISAには非課税投資枠があり、次のようになっています。
- 購入できる上限は年間40万円
- 年間40万円×20年間となるため、投資総額は最大で800万円が上限になる
- 非課税投資枠内で購入して得られた収益は最長20年間非課税となる
- 非課税投資枠は翌年以降に繰り越しができない
つみたてNISAで気を付けたいのが、年間40万円という上限です。
上限ギリギリの金額まで使った場合、積立の途中で分配金が入ると年間40万円という上限額を越えてしまうことがあります。
上限を超えてしまうと積立投資ができなくなるので、分配金のことを考えて投資額を考えなくてはいけません。
もう1つ、つみたてNISAは非課税期間が終わった後、収益はNISA口座以外の口座(普通口座など)に払い出しされるようになっています。
20年間の非課税期間が終了した後に他の非課税投資枠に移すこと(ロールオーバー)はできないことになっています。
また、つみたてNISAは利用期限が決まっており、2037年までの制度となっています。
非課税は購入から20年間は続きますが、購入は2037年までしかできないということを覚えておきましょう。
つみたてNISAを始めるためにしなくてはいけないこと
つみたてNISAを始める時、銀行に口座があるからすぐできるというものではありません。
つみたてNISAを始めるには、いくつかやらなくてはいけないことがあります。
始める前に「つみたてNISA口座」の開設をする
つみたてNISAを始めるには、まずNISA口座を開設しなければいけません。口座を開設する時にも、いくつか注意しなくてはいけないことがあります。
- つみたてNISAの口座は1人1口座しか作ることができない
- 現在国内に居住する満20歳以上でなければ口座開設ができない
- つみたてNISAは複数の金融機関で利用できない
- 1年単位で別の金融機関への変更はできるが、その都度手続きが必要
また、口座を作るといっても銀行や証券会社へ行ってすぐにできるものではありません。
つみたてNISA口座を作る手順は次のようになっています。
- 金融機関(銀行や証券会社)でつみたてNISA専用口座の開設をする
- つみたてNISA口座開設申込書(非課税適用確認書の交付申請書 兼 非課税口座開設届出書)を取り寄せる
- 必要事項を記入し、本人確認書類(運転免許所やパスポート)のコピー、マイナンバーカードもしくは通知カードのコピーを添付して金融機関に提出する
- 税務署による申請内容の確認を行い、完了後に口座を開設した金融機関へ通知が届く
- 金融機関がつみたてNISA口座を開設、つみたてNISA口座開設完了の通知が届く
- つみたてNISA口座で運用開始
口座開設のために金融機関に行ったら終わりというわけではありません。
書類の取り寄せなどもあるので、分からないことがある時は、口座開設に行った際に銀行や証券会社に聞いて漏れのないようにしましょう。
また、つみたてNISAは一般NISAと併用ができないため、一般NISAをすでにしている場合はつみたてNISA口座が作れません。
無理のない金額で積み立てる金額を決める
つみたてNISA口座が開設したら、次は投資する金額を決めていきます。
年間40万円が限度額だからといって、フルに使う必要はありません。毎月しっかり積立ができる金額を設定していくことが大事です。
年間40万円をフルに使う場合、月の上限は33,333円になります。
また、毎月の積立は少なくしてボーナス時期や臨時収入が定期的に入る時期がある場合は、指定月のみ増額することもできます。
つみたてNISAのメリット・デメリット
つみたてNISAは20年間も収益が非課税なのでとてもいいものなのですが、メリットばかりではありません。
始める前につみたてNISAのデメリットも知っておく必要があります。
メリットその1.運用利益が最長20年間非課税
つみたてNISAの1番のメリットは、本来投資で得た利益には20.315%の税金がかかるのですが、それがかからないということです。
例として、投資で10万円の利益を得た場合、本来であれば20.315%の税金が引かれるため79,685円しか手元に戻ってきません。
しかしつみたてNISAの場合、非課税になるので10万円がそのまま利益として手元に戻ってきます。
メリットその2.少額の投資から始めることができる
銀行や証券会社によって違いますが、積立金額を100円から設定しているところもあります。
最初は少額で始めて、慣れてきたら翌年から少し投資額を増やすということもできるのが嬉しい点です。
メリットその3.一定基準を満たした投資信託が対象なので初心者でも始めやすい
NISAや証券口座の投資信託が難しいと感じるのは、商品選びです。投資信託は公社債投資信託を除いても5000本以上あると言われています。
その中から選ぶのは目利きじゃないと難しい作業です。
つみたてNISAの場合、金融庁が「長期」「積立」「分散投資」に適していると判断した、一定基準を満たした投資信託・ETFが対象です。
また、次のような条件もあります。
- 販売手数料が無料
- 信託期間が20年以上
- 分配金の支払頻度が少ない
- 信託報酬等のコストが低水準
このような条件と満たした商品は、114本となっています。選ぶものを絞られているため、初心者でも自分が投資するものを選びやすくなっています。
メリットその4.一定金額を投資するので売買判断がいらない
つみたてNISAは一定金額を定期的に投資していく方法です。投資する商品は相場によって価格の変動があります。
投資の場合、価格が上がった時に売ったり下がった時に買ったりということをしなくていけませんが、つみたてNISAは決まった時に投資をするだけなので、売買判断がいりません。
また、定期的に一定金額を投資する「積立投資」の場合、価格変動のリスクが低いためドル・コスト平均法の効果も期待できます。
メリットその5.いつでも払い出しができる
つみたてNISAは投資期間中でも自由に資金を払い出しすることができます。
同じNISAにジュニアNISAというのがありますが、ジュニアNISAは18歳までは非課税で払い出しすることができません。
デメリットその1.元本保証をされているわけではない
つみたてNISAの場合、投資する商品を金融庁が厳選しているため、元本割はしないと思っている人がいます。
これはあくまでも金融庁が厳選しているだけであって、元本保証をしているというわけではありません。
つみたてNISAも元本割れをする可能性もあるということもあり、かならず利益が生まれるというものではありません。
デメリットその2.投資信託の商品が少ない
投資信託の商品を選ぶときに数が多いと迷ってしまうということで、数が絞られているつみたてNISAは初心者でも始めやすいと言われていますが、数が少ないため自分が望んでいるようなものがない可能性があります。
デメリットその3.非課税対象枠を繰り越すことができない
つみたてNISAの年間限度額は40万円です。1年間にその限度額を使わなかったからといって、来年以降にその枠を繰り越すことはできません。
あくまでも年間40万円という上限は変わりがなく、使わなかった分はその年で終了ということになります。
デメリットその4.損益通算や繰越控除ができない
つみたてNISAだけではありませんが、全てのNISAが損益通算できません。
いくつかの金融機関で取引をしている場合、例として「A証券会社で10万円の損失、B証券会社で40万円の利益」といったことがあります。
このような時、利益と損失を相殺して損失が出た時は利益から差引いたトータルの利益から税金を算出することができます。これを損益通算と言います。
しかしNISAの場合は損益通算対象ではないのでできません。
また、利益と損失を差引いて損失が多かった場合、残った分を3年間にわたって繰越し、次年度以降の利益から差引いていくことができます。
これを繰越控除と言いますが、NISAは損益通算ができないため、繰越控除もできません。
デメリットその5.年間の投資額が少ない
少額からの投資ができるというのがつみたてNISAのメリットでもありますが、投資に慣れてきた時に利益を考えると投資額が少ないと感じることもあります。
特に投資額を大きくしたいという人や、一括で投資がしたいという人にはつみたてNISAはデメリットに当たります。
デメリットその6.所得控除の対象ではない
節税対策として名前を耳にする「iDeCo」は積立てた金額は所得控除となるため、所得税や住民税の軽減となります。
つみたてNISAは所得控除対象外なので、適用されません。
つみたてNISAと一般NISAの違いを知る
つみたてNISAを調べると比較で出てくるのが一般NISAです。
つみたてNISAを始める前に一般NISAとの違いを知って自分にどちらが向いているか知ることが大事です。
つみたてNISAと一般NISAを比較
つみたてNISAと一般NISAは年間限度額や非課税期間など違う部分がたくさんあります。
どういうところが違うのか、下記の表で見ていきましょう。
一般NISA | つみたてNISA | |
---|---|---|
投資方法 | 通常買付、積立買付 | 積立買付 |
対象商品 | 株式(ETF含む)、投資信託 | 投資信託(ETF含む) |
非課税投資枠 | 年間120万円 | 年間40万円 |
非課税投資期間 | 5年間 | 20年間 |
途中の引き出し | 可能 | 可能 |
商品移管 (ロールオーバー) |
できる | できない |
つみたてNISAは積立買付のみで非課税投資枠は年間40万円と一般NISAに比べると低く、非課税投資期間も20年間と長いため、コツコツと始めたいという人向けです。
もう1つのNISA「ジュニアNISA」とは
つみたてNISAを調べているともう1つ出てくるのが「ジュニアNISA」です。
ジュニアNISAの概要は次のようになります。
- 20歳未満を対象としたNISA
- 株式、投資信託等の投資から得られた分配金、配当金、譲渡益が非課税対象
- 非課税投資枠は年間80万円
- 非課税期間は最長5年間
- 投資可能期間は2023年まで
- 親権者等が孫や子供の代理で運用できる
ジュニアNISAで1番気を付けなければいけないのが、名義者(孫、子供)が18歳になるまで払出しができないということです。
非課税期間が過ぎたからといって払出しをしようとしてもできないので注意しましょう。
つみたてNISAはコツコツと積み立てたい人にオススメ
老後資産や預貯金の利息が低いから投資を始めてみようという人もいると思います。
でも投資をしたことがないという投資初心者の人には毎月コツコツと積み立てができるつみたてNISAから始めるのもいいかもしれません。
特につみたてNISAの場合、証券会社や銀行によっては毎月100円から積み立てができるものもあります。
投資を始めたいけれど、難しいことが分からないという人は非課税制度のつみたてNISAを上手に使ってみましょう。