会社から毎月必ず支給される「給与明細」。給与支給額(手取り額)は確認するけれど、他の項目はあまり見ていないという人が多いのではないでしょうか?
給与明細の仕様は会社によって様々ではありますが、一般的には、主に4つ(勤怠・支給・控除・差引合計)の構成で成り立っています。
しかし、給与明細は毎月変動する箇所(残業代や控除額など)もあるので、正しい見方はきちんと把握しておきたいもの。「なんで手取り金額がこんなに少ないの?」そんな疑問も全て給与明細を見れば答えが記載されているのです。
そこでこの記事では、今更聞けないと思っている人も少なくないであろう、給与明細の見方のポイントについて、詳しく解説していきます。
Contents
給与明細には何が載っている?給与明細の基礎を知ろう!
給与明細は紙で渡される場合と、PCでデータをもらう場合があり、必要であれば自分で印刷するという方法を取っている会社があります。
給与明細は軽く目を通す程度という人だけでなく、給与明細を渡されても見ない、あるいはPC画面で確認することはなく、銀行口座に振り込まれた金額だけを確認しているという人もいるかもしれません。また、すぐに捨ててしまっているという人も含め、それは全てNGな行為です。
給与明細の見方がイマイチわからずにいる人も多いと思いますので、ここできちんと確認しておきましょう。
冒頭でもお伝えしたように、給与明細は一般的に、4つの項目で成り立っています。
- 勤怠
- 支給
- 控除
- 差引合計
では、上記の4項目についてそれぞれ見ていきましょう。
1.勤怠欄について
会社によって給与の締め日と支払日は、「月末締めの25日払い」「15日締めの月末払い」など様々ですが、必ず締め日までの1ヵ月間の実績が記載されます。
近年ではPCで管理されていることが多く、自動的に管理されていたデータを基に、最終的に人の目で確認するという流れである会社も少なくないでしょう。「給与明細は絶対に正しい」と思い込んでいると、誤った記録のまま気付かないということも生じる可能性もあります。
有休を利用したのに残数が合わないといった場合には、締め日と支給日の関係でタイムラグが生じている可能性もあるので、給与の締め日と支給日もきちんと把握しておきましょう。
2.支給欄について
残業手当は時間と金額が記載されていますが、どのように算出されているのでしょうか?
■残業手当の算出方法■
(例)
月給(基本給) | 23万円 |
---|---|
1ヵ月の所定労働時間 | 160時間 |
残業手当割増率 | 125% |
残業時間 | 30時間 |
残業手当…1,437円×30時間×125%=53,887円
上記の計算により、(例)の場合、残業手当は53,887円となることがわかります。
残業手当については、自分が残業した時間分、きちんと支給されているかを確認しておくようにしましょう。特に、遅くまで残業をした場合や休日出勤をした場合は、残業手当が割り増しになるケースもあるので要注意です。
※残業手当は会社ごとに規定が異なるため、就業規則を確認してください。
また、「みなし労働時間制」で働いている人の場合、雇用契約を再度よく確認しておく必要があります。
しかし、みなし労働時間を超えて働いた場合には、超えた分の残業代は支払われなくてはなりません。きちんと給与明細を確認し、支払われていない場合は上司や担当の人に伝えるようにしましょう。
3.控除欄について
では、それぞれがどのような内容のものなのかを確認していきましょう。
- ■社会保険料■
- 社会保険料には、健康保険と厚生年金保険の2種類があり、基本給に残業手当などの手当を含めた報酬月額を参考に、「標準報酬月額×保険料率」で算出します。
社会保険料は会社との折半ですので、給与明細には折半された金額が記載されます。(※小規模会社などは、国民健康保険に加入する場合もあります。)
- ■雇用保険料■
- 雇用保険は、失業してしまった時に生活を安定させるための保険です。雇用保険料は、通勤手当を含めた月の合計給与に、その年の雇用保険料率を掛けた金額となります。ただし、結婚祝金や経費精算などの金額は算出対象には含まれません。
- ■所得税■
- 所得税は、基本給と各種手当の全ての合計金額から、社会保険料と雇用保険料を差し引いた金額を「源泉徴収税額表」に当てはめて割り出します。
本来は年に一度算出して支払う税金ですが、会社員の場合には、毎月概算で計算されて源泉徴収されます。
そのため、所得税は年末調整で再計算が行われ、払い過ぎた分があった場合には、差額が戻ってきます。逆に不足金額があった際は追加で支払う必要があります。
- ■住民税■
- 住民税は、1年間(1月~12月)の所得に応じて、翌年の6月から控除が開始されます。住民税の支払い方法には二種類があり、自分で支払う「普通徴収」と、会社が給与から天引きして支払う「特別徴収」があります。
新入社員の場合、前年度の所得がないため、翌年から支払い義務が生じますが、転職して前年度は別の企業で所得を得ていた場合などには、転職後の1年目は、普通徴収で支払うことになります。
- ■介護保険料■
- 介護保険料は、40歳以上60歳未満の人が控除の対象となり、健康保険料と一緒に会社と折半で支払うことになります。
40歳未満だから自分には関係ないと思う人は多いかもしれませんが、40歳未満であるにも関わらず、介護保険料が引かれていないかは毎月確認しましょう。
介護保険の運営は市区町村が行っているため、加入している保険の種類や地域により保険料率が異なります。
【その他控除について】
- 財形貯蓄
- 「財形」とは、「勤労者財産型貯蓄制度」の略で、会社と金融機関が提携し、給与天引きで貯蓄を行う制度のことをいいます。
「一般財形貯蓄」「財形年金貯蓄」「財形住宅貯蓄」の三種類があり、使用目的が限定されていない「一般財形貯蓄」であれば、使用目的は限定されずに利用できます。
- 企業型確定拠出型年金
- 企業が毎月積み立てを行い、従業員(加入者)が年金資産の運用を行うという制度です。任意で加入する場合と、自動的に加入する場合があります。
- 特殊会
- 従業員が自社株式を購入するにあたり、会社が給与控除や奨励金の支給を行います。
- 労働組合費
- 企業の労働組合の資金として、毎月自動的に控除されることがあります。労働環境の改善など、労働組合の活動費に充てられます。
財形貯蓄や確定拠出型年金は、給与天引きを利用して自動的に資産形成ができるので、気になる人は制度について会社に確認してみましょう。
4.差引合計欄について
差引合計欄には支給合計金額から控除合計金額を差し引いた金額、いわゆる手取り給与額が載せられます。金額が正しいかどうか、毎月きちんと確認しましょう。
【まとめ】給与明細は2年間は保管しておこう!
給与明細は1か月分の給与の詳細なデータが載ったものです。手取り給与額を見る為だけのものではなく、自身が支払ったお金の情報も記載されています。
毎月せっせと働いて稼いだお金の一部(2割程度)は控除され、自分の知らないところで使われているのですから、使われる内容くらいは自分で把握しておくべきでしょう。
また、給与明細の内容が必ずしも正確であるとは限りません。出勤日数が間違っていたり、残業手当の金額が間違っていたり、手当のつけ忘れがあったりと、まれに間違いは生じることがあります。
毎月必ず自分の目で確認を行い、間違いがあれば速やかに対応してもらいましょう。
ついつい適当に扱ってしまいがちな給与明細ですが、とても大事な書類ですので、今後はもう少し関心を持ち、毎月きちんと目を通すようにしてください。
また、給与明細はすぐに捨ててしまうのではなく、前年度の同じ月と見比べられるよう、明細用紙をバインダーなどでまとめる、あるいはデータ保管でも構いませんので、2年間程は大切に保管しておくことをおすすめします。