給与明細を見た時、「額面給与」と「手取り金額」の違いに愕然としてしまうということはありませんか?
「手取り金額」は、「額面給与」から所得税や住民税に加え、年金や健康保険料が控除として引かれた金額になりますので、「え?こんなに引かれるの!?」なんて思うこともあるかもしれません。
所得が高ければ高い程、引かれる額も大きくなるわけですが、具体的にどのような計算方法で算出されているのでしょうか?
この記事では、給与の手取り金額から差し引かれる税金のことや、控除額の計算方法について詳しく解説していきますので、是非参考にして、給料の手取りシミュレーションをしてみてください。
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「手取り給与のおおよその金額」と「給与額面から引かれるもの」
冒頭でもお伝えしたように、額面給与から税金や各種保険料が引かれ、手取り金額が決まりますが、まずはおおよそいくらくらいが手取りになるのかを見ていきましょう。
手取り給与のおおよその金額の出し方
まず、給与明細の額面のうち、おおよそ75%~85%が手取りとなるのが一般的です。また、独身なのか、扶養家族がいるのかでも手取り金額は変わってきます。
おおよその金額を算出したい場合には、自身の額面給与の80%をかけてみましょう。
額面給与が高ければ高い程に所得税率も上がり、大体60万円を超えたくらいの額面給与になると手取りの割合は75%を切ってきます。
額面給与から引かれるものとは?
では続いて、給与額面から引かれているものの項目を確認していきましょう。
- 健康保険料
- 健康保険料は会社が半分を負担し、残りの半分が給与から天引きされます。健康保険に加入していることにより、怪我や病気で病院にかかった際に、3割負担の支払いで済むのです。会社がどの健康保険組合に加入しているにより保険料率が異なります。
- 雇用保険料
- 雇用保険料は事業によって保険料率が異なります。雇用保険に加入していることで、失業したときに失業給付などを受けることができます。
- 所得税
- 所得税は毎月の給料の金額に応じて計算され、所得税が徴収されます。年末調整(あるいは確定申告)で1年間の源泉所得税が改めて計算され、正確な徴収金額が算出され清算されます。
- 住民税
- 住民税は、給与天引きの場合、前年の所得に対して課税され、1年間かけて分割して支払います。退職時に住民税額が残っている場合には、残額を自身で支払うことになります。(最後の給与から残りの金額が徴収される場合もあります。)また、退職した翌年が無職で収入がない状態であったとしても、前年の所得に応じて住民税がかかるので注意が必要です。
- 介護保険
- 介護保険は40歳以上になると加入義務が発生し、健康保険料と一緒に納めることになります。介護保険に加入しておくことで、介護が必要になった際には、1~2割の負担でサービスを受けることができます。
- 厚生年金
- 厚生年金保は、険将来年金をもらうための保険です。保険料は会社が半分を負担し、残り半分を自身が負担します。
扶養家族がいる場合の手取り給与の違い
「扶養家族」がいる場合、「扶養控除」を受けることができるため、扶養家族が多ければ多い程手取り金額は増えます。
「扶養家族」とは、
- 専業主婦(収入なし)
- 16歳以上の子供
- 親(収入なし)
などが該当し、収入がある世帯主に養われている人を指します。
「扶養控除」では、所得税や住民税で優遇を受けることができ、19歳以上23歳未満の子供と、70歳以上(親)の扶養家族がいる場合には、特に優遇されます。
- 扶養家族がいない場合…27万4,240円
- 扶養家族が1人の場合…27万8,550円
- 扶養家族が2人の場合…28万2,980円
- 扶養家族が3人の場合…28万7,290円
- 扶養家族が4人の場合…29万1,700円
- ※概算は以下を参考に算出
- ・【健康保険・厚生年金】…協会けんぽ「平成31年4月分(5月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)」を参考
・【雇用保険】…0.3%
・【所得税】…国税庁「給与所得の源泉徴収税額表(平成31年(2019年)分)」を参考
・【住民税】…前年も同額の給与であることを前提に算出
額面給与から何をどのくらい引けばいい?手取り給与額の計算方法
手取り給与額は基本給に加え、時間外労働手当・超過労働手当・住宅手当・資格手当・出張手当・通勤手当・扶養手当など、諸手当や、職種によっては出来高に応じて歩合給が付加されて支給されます。
そして、出張手当や通勤手当などの非課税の手当を除き、総支給額からあらかじめ天引きされるのが、先程ご紹介した各種保険や税金などの「控除」です。
おおよその手取り給与の金額は、額面給与のおおよそ75~85%とお話しましたが、正確な手取り給与額を算出したい場合にはどうしたらよいのでしょうか?
手取り給与額の計算方法
手取り給与額の計算をするには、「支給額」と「控除額」の1つ1つの金額が明確にできれば、さほど難しくもありません。まずは以下の項目を確認しましょう。
【支給額】
基本給に加え、残業や出張などの労働状況・各種手当などの会社の規定をチェックし、額面支給額がいくらになるのかを算出します。
【控除】
- ①健康保険
- 保険料率は加入している健康保険組合によって異なります。仮に「協会けんぽ(東京)」の場合、給与の4.955%の保険料率になります。
- ②介護保険
- 介護保険料が引かれるのは40歳以上になると、「協会けんぽ(全国一律)」の場合、0.865%が保険料率が加算されます。健康保険と同様に、保険料率は会社で入っている健康保険組合によって異なります。
- ③厚生年金
- 厚生年金は、給与の9.15%引かれます。これは、「日本年金機構・厚生年金保険料額表」の「日本年金機構給与」をランク分けした「標準報酬月額等級」によって決まります。
- ④雇用保険
- 雇用保険は、一般事業の場合、給与の0.3%の保険料率が引かれます。農林水産、清酒製造、建設の場合には、給与の0.4%の保険料率が控除されます。
- ⑤所得税
- 月給から社会保険料を引いた金額を、その年の「国税庁・源泉徴収税額表」の月額表を参考に確認します。
- ⑥住民税
- 会社経由で配布される「住民税課税決定通知書」を確認します。この住民税額は、前年の年収から控除を引いた金額に10%を掛け、均等割にあたる5000円を足して総額を算出します。給与天引きの場合、これを12ヶ月に分けて支払います。
では、上記を基に、実際に計算してみましょう。
(例)【30歳独身/正社員】
項目 | 金額 |
---|---|
基本給 | 270,000円 |
時間外勤務手当 | 18,000円 |
住宅手当 | 20,000円 |
総支給額合計(A) | 308,000円 |
【控除(社会保険)】
項目 | 金額 |
---|---|
健康保険 | 15,261円 |
介護保険 | 0円 |
厚生年金保険 | 28,182円 |
雇用保険 | 924円 |
控除合計(B) | 44,367円 |
【控除(税金)】
項目 | 金額 |
---|---|
所得税 | 7,610円 |
住民税(仮) | 18,000円 |
控除合計(C) | 25,610円 |
(A)308,000-(Ⅾ)69,977=(手取り金額)238,023円
※通勤手当は非課税なので、上記には明記していません。
※時間外勤務手当はその月の残業時間によって変動するため、その金額に応じて掛かる控除額も変わってきます。
賞与(ボーナス)の手取り額の計算方法
毎月の給与とは別に賞与(ボーナス)をもらう場合にも、額面給与の75~85%が手取りになります。しかし、ボーナスの手取り額は、月々の給与の手取り額を計算する場合とは少し異なる点があります。
- ①健康保険・介護保険・厚生年金
- 賞与額から1000円未満を切り捨て、月々の給与と同じ保険料率をかけます。
- ②雇用保険
- 月々の給与と同様に、一般事業で0.3%、農林水産・清酒製造建設の場合には給与の0.4%を掛けます。
- ③所得税
- 【賞与(ボーナス)-前月の給与から社会保険料を引いた金額=課税対象額】となり、これを基に賞与用の所得税率を確認し、賞与の金額にかけて算出します。(小数点以下は切り捨てる)※賞与にかかる所得税率は、月々の給与よりも高めに設定されていますが、年末調整(または確定申告)で精算されます。
- ④住民税
- 住民税は、年間の課税合計額を12ヵ月に分けて引かれるので、ボーナスからは引かれません。
(例)【30歳独身/正社員】
項目 | 金額 |
---|---|
賞与支給額 | 540,000円 |
総支給額合計(A) | 540,000円 |
【控除(社会保険)】
項目 | 金額 |
---|---|
健康保険 | 26,757円 |
介護保険 | 0円 |
厚生年金保険 | 49,410円 |
雇用保険 | 1,620円 |
控除合計(B) | 77,787円 |
【控除(税金)】
項目 | 金額 |
---|---|
所得税 | 28,315円 |
控除合計(C) | 28,315円 |
(A)540,000-(Ⅾ)106,102=(手取り金額)433,898円
上記の算出結果により、賞与の手取り金額は、額面賞与額のおおよそ80%であることがわかりました。
【まとめ】手取り金額の平均は額面給与の75~85%
給与の手取り金額は、額面給与全体から健康保険・介護保険・雇用保険・厚生年金などの社会保険料や税金を引いたもので、おおよそ額面の75~85%が手取り金額になります。
求職中などで、「毎月の給与の手取り金額は○○万円くらい欲しい」という希望がある場合には、「手取り金額の約1.25%が月給となる」と考えましょう。
仮に毎月の手取り給与は20万円は欲しいという場合には、「20万×1.25=25万円」となり、月給25万円以上の求人を探せばよいということがわかります。
また、会社によっては労働組合費や退職金の積み立て金などが引かれたり、残業代がみなし残業代として基本給に含まれている場合もあるので、気になることは勤め先の会社にきちんと確認しましょう。