子供や孫の教育資金のために口座を作り預貯金をしている人は多いのではないでしょうか?
しかし大手銀行の定期預金の年利率を見ると、多くが年0.0010%とかなり低い利率となっています。
少しでも教育資金を貯めるためにと活用されているのが、学資保険やジュニアNISAです。
学資保険はコツコツとお金を貯めるものとある程度分かるのですが、ジュニアNISAは投資信託や上場株式といった言葉が出てくるため、詳しいことが分からずなかなかチャレンジできないという人もいるかもしれません。
子供や孫のために教育資金はしっかり確保したい。
そこで教育資金を確保する1つとして、ジュニアNISAを始めるために知っておきたいこと、始める前にやらなくてはいけないこと、メリット・デメリットなどについて紹介していきます。
Contents
ジュニアNISAの概要
ジュニアNISA(ジュニアニーサ)とは、2016年1月からスタートした「未成年者少額投資非課税制度」のことで、子供(孫)の将来に向けた資産形成をサポートするための非課税制度です。
次のようなものが非課税対象となります。
- 株式・投資信託に投資して得られる配当金、分配金
- 売却時に得られる譲渡益
あくまでもジュニアNISA口座のものが対象になります。
また、ジュニアNISAで取引できる金融商品には次のようなものがあります。
- 株式投資信託
- 国内・海外上場株式
- 国内・海外ETF、ETN(上場投資証券)
- 国内・海外REIT
- 国内・海外REIT
多くの商品を取り扱っているので、自分の納得のいくものを選ぶことができます。
表にまとめると次のようになります。
利用できる人 | 日本にお住まいの0~19歳の人(口座を開設する年の1月1日現在) |
---|---|
非課税対象 | 株式・投資信託等への投資から得られる配当金・分配金や譲渡益 |
口座開設可能数 | 1人1口座 |
非課税投資枠 | 新規投資額で毎年80万円が上限 |
非課税期間 | 最長5年間 |
投資可能期間 | 2016年~2023年 |
運用管理者 | 口座開設者本人(未成年者)の二親等以内の親族(両親・祖父母等) |
払出し | 18歳までは払出し制限あり。 |
(出典:金融庁「ジュニアNISAとは」)
ジュニアNISAの場合、原則として18歳まで払出しができません。だからといって18歳になったからすぐに払出しができるかというとそうではありません。
3月31日時点で18歳である年の前年12月31日までの間は、原則として払出しができないようになっています。
まずは、ジュニアNISAの概要を知ることから始めましょう。
ジュニアNISAの非課税制度を理解しよう
非課税ということは節税にも繋がりますし、子供のためにジュニアNISAを始めようという人もいるのではないでしょうか。
ジュニアNISAは他のNISAと違い、払出し期間や投資可能期間などがあるので、その制度を理解することが大事です。
ジュニアNISAには非課税投資枠があり、次のようになっています。
- 購入できる上限は年間80万円
- 年間80万円×5年間となるため、投資総額は最大で400万円が上限になる
- 非課税投資枠は翌年以降に繰り越しができない
ジュニアNISAで気を付けたいのが、非課税期間は5年間でも口座開設者が18歳になるまでジュニアNISA口座から払出しができないということです。
18歳になる前に払出しをする場合、災害等のやむを得ない場合以外は過去の利益に対して課税され、口座を廃止という形になります。
ジュニアNISAを始めるためにしなくてはいけないこと
ジュニアNISAを始める時、銀行や証券会社の口座があるからすぐできるというものではありません。
ジュニアNISAを始めるには、いくつかやらなくてはいけないことがあります。
始める前に「ジュニアNISA口座」の開設をする
ジュニアNISAを始めるには、まずジュニアNISA口座を開設しなければいけません。
口座を開設する時にも、いくつか注意しなくてはいけないことがあります。
- ジュニアNISA口座は1人につき1口座しか開設できない
- ジュニアNISA口座を開設する際は、未成年者以外に親権者等も金融機関に専用口座の開設が必要
- 金融機関の変更はできない。金融機関を変更する場合は口座廃止が必要
また、口座を作るといっても銀行や証券会社へ行ってすぐにできるものではありません。
ジュニアNISA口座を作る手順は次のようになっています。
- 金融機関(銀行や証券会社)でジュニアNISA専用口座の開設をする
- 金融機関からジュニアNISA口座開設申込書(未成年者非課税適用確認書の交付申請書、未成年者口座開設届出書など)を取り寄せる
- 必要事項を記入し、未成年者の本人確認書類(運転免許所やパスポート)のコピー、マイナンバーカードもしくは通知カードのコピー、さらに親権者等の続柄がわかる確認書類(住民票の写しなど)を添付して金融機関に提出する
- 税務署による申請内容の確認を行い、完了後に口座を開設した金融機関へ通知が届く
- 金融機関がジュニアNISA口座を開設、ジュニアNISA口座開設完了の通知が届く
- ジュニアNISA口座で運用開始
ジュニアNISAの口座を開設する時、親権者等がジュニアNISA口座を開設しようとしている銀行や証券会社に口座を持っていない場合、親権者等の口座開設も必要となります。
口座開設のために金融機関に行ったら終わりというわけではありません。
書類の取り寄せなどもあるので、分からないことがある時は、口座開設に行った際に銀行や証券会社に聞いて漏れのないようにしましょう。
口座を作る前に必ず各金融機関の取り扱う商品をチェックする
ジュニアNISA口座が開設した後は、投資する商品や金額を決めていきます。
ジュニアNISAは一般NISAと同じように商品数が多いので選択肢はたくさんあります。
ただし、銀行や証券会社によって取り扱っている商品が違うので、ジュニアNISA口座を作る前にどの商品を購入するかある程度目星をつけておくことが大事です。
ジュニアNISA口座を作ったけれど、自分が購入しようとしていた商品を取り扱っていなかったということになると、口座を廃止してまた新たに作らなくてはいけなくなってしまいます。
ジュニアNISAのメリット・デメリット
ジュニアNISAは最長5年間と意外と期間が短いため、あまりお得と感じないという人もいます。
ジュニアNISAを始める前に、必ずメリット・デメリットをチェックしておきましょう。
メリットその1.ロールオーバーで保有期間延長ができる
ジュニアNISA口座は最長で5年間非課税対象になります。
5年の間に子供や孫が18歳になっていれば非課税対象期間が終了した時に払出しすればいいのですが、18歳以下の場合は基本的に払出しができません。
そういう場合は、子供が18歳になるまでロールオーバーをすれば保有期間の延長が可能になります。
ジュニアNISAのロールオーバーとは非課税期間終了後に発生するもので、手続きをすることでさらに5年間、非課税で投資信託や株式を引き続き保有することができます。
メリットその2.教育資金の準備として利用することができる
ジュニアNISAは子供の教育資金準備のために利用することもできます。
ジュニアNISAを運用して教育資金に充てる場合、学資保険よりも資金を増やせる可能性もありますし、運用で得た利益は非課税対象になります。
ジュニアNISAの場合、18歳まで払出しができないので大学の入学資金のために利用するというのも方法の1つです。
メリットその3.生前贈与としてジュニアNISAを活用できる
ジュニアNISAは子供や孫のために利用するものですが、教育資金だけではなく生前贈与で利用することもできます。
贈与税は贈る相手1人当たり年間110万円となっています。
ジュニアNISAは年間80万円までが非課税枠なので、80万円を5年間生前贈与すればその分だけ非課税になります。
ただし、贈与の内容や方法によっては課税対象になる場合もあるので、ジュニアNISAで生前贈与をする時は必ず税の専門家に相談しておきましょう。
メリットその4. 非課税対象枠が年間80万円と大きい
ジュニアNISAの非課税対象枠は年間80万円までになっています。また非課税期間は最長5年間なので、総額400万円までが非課税対象枠となります。
本来であれば、投資などで得られた売却益・配当金・分配金には20%の税金がかかりますが、ジュニアNISAで得られた収益は非課税なので税金が0です。
デメリットその1.口座開設者が18歳になるまで払出しができない
ジュニアNISAは両親や祖父母が子供や孫のために口座を開設しますが、開設者は子供の名前でなくてはいけません。
そしてジュニアNISAは開設者が18歳になるまで基本的に払出しができません。
やむを得ず払出しをする場合は、ジュニアNISA口座を廃止しなければいけません。
18歳になる前に払出しをする場合、過去に非課税で支払われた分配金、非課税対象の譲渡益などが課税対象となります。
デメリットその2.口座を作った後は金融機関の変更が不可能
一般NISAなどの場合、金融機関の変更は年1回であれば認められています。しかし、ジュニアNISAの場合は1度口座を作ると金融機関の変更はできません。
どうしても金融機関を変更したい場合は、現在利用しているジュニアNISA口座を廃止し、再度新たな金融機関で口座を開設しなければいけません。
ジュニアNISA口座の変更のために廃止し、再度口座を作る際には口座廃止段階で得られた売却益や配当金が課税対象となります。
デメリットその3.配当金・分配金の受取方法で課税対象になる可能がある
これは上場株式や上場投資信託を購入した場合に当てはまるのですが、配当金や分配金の受取方法には次のようなものがあります。
- 株式数比例配分方式
- 配当金受領証方式
- 登録配当金受領口座方式
- 個別銘柄指定方式
この中で非課税対象の受取方法は、「株式数比例配分方式」のみとなっています。その他の受取方法を選ぶと課税対象となります。
口座開設時に課受取方法を選ぶようになっているので、間違えないようにしましょう。
デメリットその4.非課税対象枠を繰り越すことができない
ジュニアNISAの年間限度額は80万円です。1年間にその限度額を使わなかったからといって、来年以降にその枠を繰り越すことはできません。
あくまでも年間80万円という上限は変わりがなく、使わなかった分はその年で終了ということになります。
デメリットその5.損益通算や繰越控除ができない
ジュニアNISAだけではありませんが、全てのNISAが損益通算できません。
いくつかの金融機関で取引をしている場合、例として「A証券会社で20万円の損失、B証券会社で30万円の利益」といったことがあります。
このような時、利益と損失を相殺して損失が出た時は利益から差引いたトータルの利益から税金を算出することができます。これを損益通算と言います。
しかしNISAの場合は損益通算対象ではないのでできません。
また、利益と損失を差引いて損失が多かった場合、残った分を3年間にわたって繰越し、次年度以降の利益から差引いていくことができます。
これを繰越控除と言いますが、NISAは損益通算ができないため、繰越控除もできません。
ジュニアNISAと学資保険の違いを知る
ジュニアNISAを調べると比較として出てくるのが、学資保険です。
ジュニアNISAを始める前に学資保険との違いを知ってどちらが自分に向いているか知ることが大事です。
ジュニアNISAと学資保険を比較
ジュニアNISAと学資保険は子供の教育資金を効率よく貯めるための手段の1つですが、全く違うものになっています。
どういうところが違うのか、下記の表で見ていきましょう。
ジュニアNISA | 学資保険 | |
---|---|---|
収益性 | 高い | 低い |
安全性 | 低い | 高い |
メリット | 投資などによる収益が最長5年間非課税になる | 契約者死亡時の払込免除などの保障がある 一般生命保険料控除の対象になる |
デメリット | 金融機関の変更不可 元本割れの可能性がある |
途中解約をすると元本割れの可能性がある |
(出典:ちばぎんブログ「ジュニアNISAと学資保険の違い」)
ジュニアNISAも学資保険もメリットとデメリットがあります。
ジュニアNISAの場合、投資になるため必ず収益があるというわけではありません。購入した商品価値が下がれば、損失を生む可能性があります。
コツコツと教育資金を貯蓄したいという人は、学資保険の方が向いています。
また、資金的に余裕がある人はジュニアNISAや学資保険との併用をするなどの方法もあります。
ジュニアNISAを活用する時は詳細を必ず調べる
子供や孫の教育資金のためにジュニアNISAを活用することはいいことだと思います。
しかし、必ず利益が生まれるものではなく元本割れをすることもありますし、払出しの条件などもあるため、全ての人に向いているかというとそうではありません。
自分のお財布事情や子供の学費でどのくらい必要なのかを見立ててから利用することが重要です。
子供や孫のためにとジュニアNISAを活用する場合、「お得だから」「利益が生まれるから」といってすぐに飛びつくのではなく、詳細を調べるところから始めるようにしましょう。