iDeCo(イデコ)を利用して一年目。積み立ててきた掛け金は全額所得控除されて税金が戻ってくるということはわかっていても、年末調整や確定申告の時期になると、「どのように手続きをしたらいいかわからない」という人は少なくないようです。
面倒だからときちんとした手続きを行わなければ、勝手に税金が戻ってくるということはありません。iDeCoの掛け金は、支払った全額が「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除として扱われ、課税所得額を抑えることができるのです。
そこでこの記事では、iDeCoの年末調整や確定申告の具体的なやり方(書き方)などについて、詳しくご紹介していきます。
Contents
そもそも「年末調整」と「確定申告」って?
iDeCoの年末調整や確定申告のやり方についてご紹介する前に、まずは「年末調整」と「確定申告」について確認しておきましょう。
年末調整とは?
このように過不足金額を調整することを「年末調整」といい、年末調整で余分に源泉徴収されていた金額は社員に還付される仕組みになっています。
また、年末調整は会社側が行うため、従業員は自身で計算をする必要はありません。
確定申告とは?
一般的に、会社勤めの場合は、先程ご説明した「年末調整」を行うため、確定申告を行う必要はありません。確定申告が必要な人は以下のような人です。
- 個人事業主
- フリーランス
- 会社経営者
- 不動産収入がある人
また、会社員であっても確定申告が必要になるケースもあります。
- 給与所得が2,000万円を超えている場合
- 二カ所以上の会社から給与をもらっている場合
- 副業所得が20万円を超えている場合
- 住宅ローン控除を初めて受け取る場合
- 医療費控除・雑損控除などを受ける場合
上記に該当する場合には、年末調整とは別途、確定申告が必要になります。
iDeCoの年末調整の手続き方法
ではここからは、iDeCoの年末調整の手続き方法についてご紹介していきます。
1.「小規模企業共済等掛金払込証明書」を受け取る
これは年間(1月~12月分まで(払込み予定額含む)まで)に支払った掛け金を証明するための書類です。小規模企業共済等掛金払込証明書が届く時期は、初回の掛け金を払い込んだ時期によって異なりますが、10月下旬~12月下旬には順次発送されます。
仮に10月下旬頃の小規模企業共済等掛金払込証明書が届いた後に掛け金の変更があった場合には、新たに変更後の掛け金に変更された小規模企業共済等掛金払込証明書が届くようになっているので、特別な手続きを行う必要はありません。
また、11月以降に初回の月払いの掛け金を支払ったという場合には、小規模企業共済等掛金払込証明書の発送は、12月下旬頃の発送になると思っておきましょう。年末調整に間に合わない場合には、確定申告をする必要があります。
年末調整の手続きの書類の記入方法
一般的に、11月~12月中旬までの期間に年末調整を行います。お勤めの会社から「給与所得者の保険料控除申告書」という年末調整を行うための書類をもらい、必要事項を記入しましょう。
iDeCoで支払った掛け金は、全額「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除として扱われます。
※このとき、「合計(控除額)」の欄にも記入するのを忘れないようにしましょう。
書類に「小規模企業共済等掛金払込証明書」を添付し、お勤めの会社に提出して完了です。
iDeCoの 確定申告の手続き方法(自営業者の場合)
「iDeCoの年末調整の手続き方法」と同様に、国民年金基金連合会から届いた「小規模企業共済等掛金払込証明書」を、大切に保管しておきます。
【確定申告書に必要事項を記入する】
①確定申告には「確定申告書B」を使用します。確定申告書B・第一表の左下部分の「小規模企業共済等掛金控除⑬」の右側の欄に、「小規模企業共済等掛金払込証明書」に記載された、iDeCoで払った掛け金の総額を記入します。
②定申告書B・第二表の右上部分、「⑬小規模企業共済等掛金控除」の「掛金の種類」の欄に、「個人型確定拠出年金」と記入します。
③「支払掛金」の欄と「合計」の欄にもiDeCoで支払った掛け金の総額を記入し、「小規模企業共済等掛金払込証明書」を添付し、税務署に提出して完了です。
iDeCoの 確定申告の手続き方法(会社員・公務員の場合)
まず、これまでに紹介してきたのと同様に、国民年金基金連合会から届いた「小規模企業共済等掛金払込証明書」を、大切に保管しておきます。
この場合、確定申告には「確定申告書A」という書類を使用します。
【確定申告書に必要事項を記入する】
①確定申告書A・第一表の左中部分の「小規模企業共済等掛金控除⑦」の右側の欄に、「小規模企業共済等掛金払込証明書」に記載されているiDeCoで払った掛け金の総額を記入します。
②確定申告書A・第二表の右上部分の「⑦小規模企業共済等掛金控除」・「掛金の種類」の欄に「個人型確定拠出年金」と記入し、「支払掛金」の欄と「合計」の欄に、iDeCoで払った掛け金の総額を記入します。
③「小規模企業共済等掛金払込証明書」を添付し、税務署に提出して完了です。
※確定申告した所得税の還付金は、基本的には4~5月頃に指定の口座に振り込まれます。
【所得税や住民税の計算】iDeCoは所得税と住民税の節税になる!
iDeCoで年末調整もしくは確定申告をし、還付される税金額を決定する為には、所得税計算が必須になります。
年末調整を行う場合には、会社が納税の手続きをしてくれるので知らなくても問題はありませんが、確定申告の時には知ってくとスムーズに手続きを行うことができます。では、順を追って見ていきましょう。
ここではわかりやすく例として、
- 年収400万円の会社員(30歳男性)
- 社会保険料控除(28万円)
- 生命保険料控除(4万円)
- iDeCoの年間支払総額(24万円)
という設定での所得税の計算をしたいと思いますが、まずはiDeCoの支払いがなかった場合を想定して算出してみます。
これに、200万円の課税率5%を掛けると、42万円×5%=10万円となります。
iDeCoの掛け金は「小規模企業共済等掛金控除」に該当し、上記の場合、年間24万円の掛け金を拠出しているので、課税所得額200万円から24万円を引くことができます。
200万円-24万円=176万円。176万円×5%=8万8000円となり、1万2000円多く節税することができるのです。
住民税はどのくらい軽減される?
また、年末調整や確定申告を行うと、所得税だけでなく住民税も軽減されます。住民税には均等割と所得割があり、両者の合計金額が住民税額となります。
- 均等割の標準税率
- 市県民税…3,000円
都道府県民税…1,000円
合計…4,000円
※上記に加え、上乗せの課税制度がある地方自治体もあります。
- 所得割の標準税率
- 市県民税…6%
都道府県民税…4%
合計…10%
所得割額=(所得金額-所得控除額)となりますので、例の場合、176万円×10%=17万6,000円となり、均等割の4000円と合わせて、18万円の住民税を支払うということになります。
しかし、iDeCoを利用していない場合には、200万円×10%=20万円となり、均等割の4000円と合わせて、20万4000円の住民税を支払うということになります。
また、所得が高い人ほど、節税金額も上がります。
【まとめ】iDeCoで財産形成をしながら節税しよう!
iDeCoの年末調整や確定申告のやり方(書き方)などについてご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?
手続き自体は決して難しいことはないので、添付書類(小規模企業共済等掛金払込証明書)を忘れずに保管して提出することと、申告忘れや申告漏れのないようにさえすれば問題ないでしょう。
また、絶対に年末調整に間に合わせたいという人であれば、「年単位拠出」を選択し、掛け金を月別に指定することで、年間の払い込み合計の予定額が証明された小規模企業共済等掛金払込証明書が10月下旬頃に送付されるため、年末調整の手続きに間に合うのでおすすめです。
老後に向けた資産形成を考えるのであれば、iDeCoなどの税制優遇のある制度を利用すると節税にもなり一石二鳥と言えるでしょう。