会社で稼ぐお金だけでは、将来が不安という時代を迎えています。少しでも貯金を増やすために、株や投資信託に挑戦している人もいますよね。
しかしせっかく配当金を稼いでも、一定金額は税金として消えていってしまいます。
納税は国民の義務ですが、支払う税金は最低限の額に抑えたいものです。
ところで配当金の税金の支払い方には、4つの種類があることをご存じでしたか。
確定申告不要制度や総合課税などの支払い方は知っている人も多いですが、それ以外にも2つ支払い方があります。
今回は配当金の4種類の税金の計算方法をご紹介します。これを読めば、あなたにあった配当金の税額の抑え方が分かります。
Contents
配当金がどうやって課税されるか初心者にも分かりやすく解説
そもそも配当金とは、いったい何なのでしょうか。初心者にも分かりやすく解説します。
配当金の解説と計算方法をご紹介
配当金とは、「法人が株主や出資者に分配するお金」を意味します。別名「配当金」とも呼ばれています。
法人が株主や出資者に分配するお金とは、純資産から支出を差し引いたお金「剰余金」や会社の「利益」などです。
この他、以下のようなものも配当金に該当します。
- 投資法人から利用者に分配された金銭
- 購入者に分配された投資信託の収益
- 購入者に分配された特定受益証券発行信託の収益
投資法人とは、投資を商品として取り扱っている企業です。
投資信託とは、複数の出資者から集めた資産を、運用の専門家が株式や債券などに投資し利益を増やそうとする商品です。
プロに運用をまかせることができるので、株のことが分からないという素人もチャレンジしやすいです。
特定受益証券信託とは、お金ではない金や銀などの貴金属や海外企業の株式などを「受益証券」にし、運用し利益を増やす商品です。
配当金の計算方法
以下の計算で配当金を算出できます。
収入金額―株式取得のための借入金の利子=配当金の金額
この計算では、「収入金額」は源泉徴収税額を差し引く前の金額でなければなりません。源泉徴収とは、会社員に手渡す給与の税金を事業者があらかじめ差し引くことです。
計算式の「株式取得のための借入金の利子」は、配当金を生ずる元本のその年における保有期間に対応するものだけです。
配当金は上場株式とそれ以外で税額が変わる!課税率の内訳をご紹介
配当金は株主や出資者が受け取る前に、以下の税率で課税されています。
【上場株式の場合】
- 所得税と復興特別所得税:15.315%
- 地方税:5%
- 合計:20.315%
【上場株式等以外の配当等の場合】
- 所得税と復興特別所得税:20.42%
- 地方税:なし
なお上場株式であっても、企業が発行している総株数の3%以上に相当する数か金額の株を持つ大株主は対象外です。
大株主の場合は、上場株式であっても「上場株式等以外の場合」の税率で課税されます。
合わせて4つ!選べる配当金の税金の支払い方と控除の仕組み
配当金の課税と控除の方法は、4種類あります。
1つは確定申告不要制度を利用する方法です。2つ目は、総合課税制度を利用する方法です。
3つ目は申告分離課税を利用する方法で、4つ目は所得税と地方税で、総合課税制度と申告不要を使い分ける方法です。
1つずつご説明します。
1.確定申告をしない「確定申告不要制度」
一部の配当金には、確定申告をしなくてもよいものもあります。このように確定申告をしなくてもいい制度を、確定申告不要制度と呼びます。
確定申告不要制度で確定申告をしなかった場合、上記で解説した約20%の税率が適用されます。
確定申告不要制度の対象は、以下の配当金です。
【上場株式等の配当等及び投資法人からの金銭の分配の場合】
- 大株主が受ける場合は、確定申告しなければなりません。
- それ以外は、金額にかかわらず確定申告をしなくてもよいです。
【上場株式等及び投資法人以外の配当等の場合】
- 10万円×配当計算期間の月数(注)÷12
1回に支払われる配当の金額が、上記の計算式で計算した金額以下である場合は、確定申告不要制度を利用できます。
特定株式投資信託、公募証券投資信託(公社債投資信託を除きます)、特定投資法人の投資口の配当なども確定申告不要制度の対象です。
2.配当控除が受けられる総合課税制度
控除とは、税金が差し引かれ少なくなることを意味します。配当控除とは、配当金の税金が差し引かれる制度です。
配当控除を受け取るためには、総合課税制度を選択して確定申告を行わなければなりません。
総合課税とは、会社からの給与や配当金など、すべての所得を合計して所得税額を計算する方法です。
その年の収入が「会社からの給与」と「株で稼いだ配当金」だった場合、その2つを合わせて所得税を計算します。
その他の収入があれば、それも合わせて所得税を計算します。
以下のものが、総合課税で合計する所得です。
- 利子所得(預貯金や公社債などの利子)
- 配当金
- 不動産所得
- 事業所得(農業などの事業から生ずる所得)
- 給与所得
- 譲渡所得(土地などの譲渡によって生ずる所得)
- 一時所得(他の所得の性質を有しない一時の所得)
- 雑所得(その他の所得)
すべての所得を合計した金額から、所得控除の合計額を差し引きます。そして残額に税率をかけて税額を計算します。
所得控除とは、医療控除や社会保険料控除など、特定の条件を満たすと利用できる制度です。
例えば医療控除などは、その年に一定額の治療費を支払うと受けられる控除制度です。(証明書の提示や確定申告の必要があります)
所得控除に該当する控除制度は、以下のものがあります。
- 雑損控除
- 医療費控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 寄附金控除
- 障害者控除
- 寡婦(寡夫)控除
- 勤労学生控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 基礎控除
上記の控除を合わせた額を、所得合計から引いて、税率をかけます。
総合課税制度の場合、合計所得額から合計控除額を引いた額が大きいほど、税率も大きくなります。
3.約20%の税率がかかる申告分離課税制度
配当金の確定申告には、総合課税制度だけではなく、申告分離課税制度を選択できます。
申告分離課税制度とは、他の所得と配当金を分けて税額を計算できる制度です。すべての所得を合わせて計算する総合課税制度とは逆の制度です。
申告分離課税制度では、確定申告をしない場合と同じで、20.315%(所得税と復興特別所得税15.31%、地方税5%)で源泉徴収が行われます。
売却損が多い人は、申告分離課税をしたほうがお得に節税になります。
4.所得税と住民税で税金の種類を分ける方法
4つ目は、少し手間がかかる方法です。
配当金にかかる税には、所得税と住民税があります。4つ目では、所得税は確定申告で総合課税を選びます。そして地方税は、申告不要にします。
総合課税のために確定申告をする手間もかかりますし、地方税は申告不要とするために市区町村の税務窓口に届け出なければなりません。
手間がかかる分だけ、税額が安くなりやすい方法でもあります。
900万円が境目!配当金の税額が安くなるそれぞれの条件を解説
それでは4つの方法のうち、どれが最も税額を抑えることができるのでしょうか。
配当金の金額によってお得な税金の支払い方は変わる
結論からいうと、お得な課税方法は配当金の額によって変わります。
「1.確定申告不要制度」と、「3.申告分離課税制度」を利用した場合は、どちらも税率は約20%です。
配当金の金額がいくらでも、税率20%に変化はありません。(申告分離制度を利用した場合は、損失分を控除できますが、今回は計算に含めないものとします)
残りの「2.総合課税制度」と「4.所得税と地方税で分ける方法」ですが、こちらは累進課税なので、配当金の額によって税率が変わります。
配当金が安ければ、税率が20%以下になることもあります。
配当金の税率が20%を超える境目の金額
「2.総合課税制度」と「4.所得税と地方税で分ける方法」なら「4.所得税と地方税で分ける方法」のほうが税率を抑えられます。
地方税の申告不要を市区町村の税務窓口に届け出るのが面倒などの理由がなければ、「4.所得税と地方税で分ける方法」を選んだほうがよいでしょう。
「4.所得税と地方税で分ける方法」の配当金が900万円を超えると、税率は20%を超えます。
900万円以下なら、「4.所得税と地方税で分ける方法」を選んだほうが税額を抑えられます。
ちなみに「2.総合課税」は695万円を超えると、税率20%を超えます。
配当金が900万円を超えるなら「3.申告分離課税制度」がお得
配当金が900万円を超えるなら、「1.確定申告不要制度」か「3.申告分離課税制度」を利用したほうがよいでしょう。
「1.確定申告不要制度」と「3.申告分離課税制度」なら、「3.申告分離課税制度」を利用したほうがお得です。税率は変わりませんが、申告分離課税制度なら損益通算で出た損失分を控除として差し引けるからです。
さらに控除として差し引ける損失は、その年だけではなく3年間繰り越せます。
配当金は4つの中から自分に合った税金の支払い方を選ぼう!
配当金の税金の支払い方には、4つの方法を選べます。
配当金が900万円以下なら、「所得税と住民税を分ける方法」を選んだほうがお得です。900万円を超えるなら、「申告分離課税制度」を選ぶとお得になるかもしれません。
「確定申告不要制度」と「申告分離課税制度」の税率は同じですが、「申告分離課税制度」なら他の口座の損失分を控除として差し引けます。
配当金の税金の支払い方は4種類ありますが、よりお得にしたいのなら、「申告分離課税制度」「所得税と住民税を分ける方法」の2つの中から選ぶことになります。
給与や配当金以外にも収入があると、確定申告の計算がさらに難しくなります。自信がない人は、専門家に力を借りたほうがよいでしょう。