「ギャングエイジ」という言葉をご存知でしょうか?これは児童心理学で、小学校中学年(3~4年生)の頃から見られる児童の発達段階を示す用語です。
この頃から子供は親や教師といった大人の干渉を離れ、友人同士でグループを作って活動したがるようになります。「ギャング(仲間)エイジ」の語源はここから来ており、子供の自立の第一歩とも言える、大切な発達段階です。
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ギャングエイジの子供に見られる特徴4つ
今まで素直だった子供が、急に口答えするようになったり、親に秘密を持ちたがるようになったら、もしかしたらギャングエイジの始まりかもしれません。以下にギャングエイジの特徴を挙げていきましょう。
家族と出かけるよりも、友達同士で遊びたがる
ギャングエイジの子供たちは、大人の目が届かないところで、仲間同士で遊ぶことが楽しくて仕方がありません。それまで放課後や休日に家族と過ごしていた子供も、親より友達同士で遊びたがることが多くなることでしょう。
親や教師の言うことに、反発したがるようになる
今まで親や教師の言うことを素直に聞いていたのに、急に反抗的になったり、口答えをするようになるのも、この時期の特徴です。
一見生意気になったように思いますが、反抗や口答えは、自我の芽生えの証拠でもあります。親や教師の言うことが本当に正しいのか?と疑問を持つようになったり、干渉されることに反発し、自分でやりたいと思うようになるのは、必ずしも悪いことではありません。
親に秘密を作ったり、嘘をついたりするようになる
親に何でも正直に言わなくなったり、子供だけの秘密を作りたがるのも、この時期の子供の特徴です。それに加え、学校の規則を破ったり、親との約束を守らなくなったりすることもあります。
しかし、子供同士のコミュニティの中で、大人に従順なのが格好悪いと思っているだけの場合もあります。もちろん規則や約束を破るのは悪いことですが、頭ごなしに叱ったり、言いたくないことを強引に聞き出すのも考えもの。注意深く見守る姿勢も大切です。
異性や性に関することに興味を持ち始める
男の子ががっしりした体つきになったり、女の子の身体が丸みを帯びてくるのもこの頃。そうなると男女の性別の違いが顕著になり、異性を意識し始めるようになります。
ギャングエイジは、成長の過程で大切なターニングポイント
親としては厄介なギャングエイジですが、子供の自我や自立心が形成される上で、大切なターニングポイントでもあります。子供同士がグループで行動することにより、集団生活での主体性を身に着けたり、自己肯定感が形成されることに繋がるからです。
- 抽象的な思考の次元への適応や他者の視点に対する理解
- 自己肯定感の育成
- 自他の尊重の意識や他者への思いやりなどの涵養
- 集団における役割の自覚や主体的な責任意識の育成
- 体験活動の実施など実社会への興味・関心を持つきっかけづくり
未熟な子供だけの集団は大人から見れば危なっかしいこともありますが、家庭ではできない経験をたくさん得ることもできます。大人の庇護のもとではなく、自分で考え、主体的に役割を担うことは、いずれ実社会に出た時にも大いに役立つことでしょう。
ギャングエイジの子供に接する時に、気を付けるべきこと
このように、ギャングエイジは子供にとって大切な成長の過程です。しかし、未熟な子供同士の集団であるゆえに、周囲に流されやすく、歯止めがきかなくなり、行動がエスカレートしてしまう場合もあります。
そんな時は、大人が随時適切な指導を行う必要があります。しかし、過干渉になってもいけないのが難しいところです。
以下にギャングエイジの子供と接する時、親として気を付けたいことをまとめました。
頭ごなしに叱りつけたり、行動を抑制したりしない
ギャングエイジの子供たちは、時に親との約束や規則を破ったり、反対されていることをしたがることがあります。
そんな時、「そんなところに行っちゃダメ」「そんなことしちゃダメ」「どうしてお母さんの言うことが聞けないの」「約束を破るなんて悪い子ね」と、頭ごなしに叱りつけ、子供の主張や行動を抑圧する態度は、子供の心を傷つけるばかりか、かえって態度を硬化させる可能性もあります。
身に危険があったり、人を傷つけるような行動は別として、子供がやりたいことがあるのなら、まずはやらせてあげるのもいいかもしれません。
例えば、放課後はスポーツをしたい子供の主張が食い違った場合、無理やり塾に行かせるよりも、子供の好きなスポーツをたくさんさせた方が、本人の適性を伸ばせる可能性もあります。
子供の主張をまずは聞き、叱るのではなく諭すこと
ギャングエイジの年代になると、子供なりに自我が芽生え、大人に対し意見をするようになります。それが親としては歓迎できない主張であっても、まずは耳を傾けることが大切です。
もし子供の主張を聞きもせず、「ダメ」と頭ごなしに否定されることが続くと、自分は信用されていないと失望し、子供が心を閉ざしてしまう可能性があります。
むやみに子供の友人の悪口を言わない
子供が心配なゆえに、友人関係にあれこれ干渉したがるお母さんもいますが、過保護過ぎるのは考えもの。
いくら親がこの子と仲良くしてほしいなと思っても、相性もありますし、子供が自分で選んだ友人を悪く言われると、自分自身も否定されたように感じて傷ついてしまいます。
もし心配ならば一度家に呼ぶなどして、実際にその友達のことをよく知った上で意見するようにしましょう。
子供のグループにいじめの兆候があるなら注意が必要
子供たちが無邪気に遊んでいるだけなら、微笑ましく見守りたいものですが、いじめの兆候がある場合には注意が必要です。
というのも、精神的に未熟な子供たちの中でいじめが起こると、周りに流されてしまい、行動がエスカレートしがちになるからです。
いじめは子供の側から積極的に大人に発信されることはないため、端からは見えにくい場合もあります。
特にいじめられている子は、親に心配をかけたくないからと、悩みを打ち明けない場合もあります。自分から言わなくても気付いてあげられるよう、親は子供の変化を注意深く見守る姿勢が必要です。
都市部ではギャングエイジが喪失する傾向にある?
自我の芽生えや自立の第一歩として大切な意味を持つギャングエイジ。しかし最近は都市部を中心に学習塾や習い事に通う子が増え、遊びの3間(時間・空間・仲間)が失われ、ギャングエイジが喪失している傾向にあると言われています。
子供のためを思いたくさん習い事をさせ、挫折させたくないからと先回りをしてレールを敷く親心は分かりますが、子供が自分で考え、挑戦して成長する余地をなくしてしまうのは考えもの。挫折は人を成長させ、強くする一面もあるので、あまりがんじがらめにせず、子供の自由な選択を見守る努力も大切です。
大切なのは子供を信じる心。悩んだら周りの人にも相談を
ギャングエイジの時期、それまで従順だった子供が反抗的になったりして、うろたえる親御さんも多いと思います。
しかし一番よくないのは、その動揺を子供にそのままぶつけてしまうこと。怒ったり泣いたりして、強引に子供に言う事を聞かせようとすると、親の心の不安定さが子供にも伝染してしまい、お互い感情的になってコミュニケーションが難しくなってしまいます。
この時期に扱いにくさを感じるのは当然のことなので、親御さんは慌てず、どっしり構えることが大切です。子供の変化を冷静に受け止め、許容できることなら、ある程度子供の意思に任せてもいいでしょう。ただし、逸脱した行動に走らないよう、危なっかしい時は諭すなどの働きかけも必要です。
相談できる人が周りにいない場合は、地域の子育て相談窓口などを利用してもいいでしょう。誰かと悩みを共有することで、自分が不安に思っていたことは些細なことだと思えるかもしれませんし、解決のための協力を得られる可能性もあります。
日本では母親ばかりに子育ての責任が押し付けられがちで、責任感の強い人は、躾がなってないと責められないために子供を矯正しがちです。しかし、それが子供のためになるとは限りません。
大切な個性の芽を摘まないためにも、ギャングエイジはおおらかな目で子供を見守りたいもの。そのためには、母親にばかり厳しい目を向ける世間の風潮も、少し改善された方がよいのかもしれませんね。